認識不足では済まされない消費税の届出

「特例選択届出書の再確認」というテーマで12月に行われた税理士熊王先生の研修会を聞いて消費税の届出の奥深さを再認識しましたので、自分でもきちんと理解して整理しておこうとまとめてみることにしました。

皆様記憶に新しい22年度改正法についてきちんと整理はできておりますでしょうか。
・・・いわゆる自動販売機のスキームに対抗する改正法です。
22年度改正とは、下記①~③の期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、取得日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間(第三課税期間)までの間は本則課税が強制適用になります。
いわゆる「3年縛り」というものです。3年間強制的に本則課税を適用することで還付しすぎた消費税を「課税売上割合が著しく変動した場合」により適正に調整することができるからです。

課税事業者を選択した場合の強制適用期間中

②資本金1,000万円以上の新設法人の基準期間がない事業年度中

③特定新規設立法人の基準期間がない事業年度中
しかし、22年度改正には隙間が多かったことから「高額特定資産を取得した場合」の改正が行われました。

具体的にどういう隙間があってどのように隙間を封じていくのかを見ていきましょう。

 22年度改正法では調整対象固定資産の取得にのみ適用されるため高額であっても棚卸資産には適用されません。
つまり、不動産業者が本則規定を適用し高額な建物を仕入れて翌期に建物を売却し、簡易課税制度の適用を受けることが可能なのです。

※私自身も勘違いしていたのですが、簡易課税を選択した場合は2年継続適用ですが、本則にはそのような規定はありません。
よって、本則の翌年簡易課税にすることは「3年縛」が適用されていなければできるのです。

改正後
課税選択をした個人事業者(不動産業者)が、高額特定資産に該当する棚卸資産を取得した場合には3年間本則課税が強制適用となります。

 22年度改正法は①に該当する場合に限定されるため課税事業者の強制期間中を経過してから固定資産を取得すれば適用されません。
つまり設立事業年度から課税事業者選択届出を提出しておいて3年経過後の4期目に調整固定資産を取得し翌期から免税事業者になるということも可能です。

改正後
本則期間中に高額特定資産を取得した場合には上記①~③に該当しなくても3年縛りが適用されます。
 特定期間中の課税売上高と給与等のいずれかが1,000万円を超える場合には課税事業者選択届出書を提出することなく課税事業者となれるため3年縛りの規定は適用されません。

※いずれかが1,000万円を超える場合の規定のため通常は免税となる方を採用することが当然という気持ちでいましたらこのようにあえて課税事業者になるという隙間があったのですね。

改正後
個人事業者が、高額特定資産を取得した年において本則課税により申告した場合には、その翌々年まで本則課税が強制適用となります。

実は、よく考えると抜け穴が多い改正であったのですね・・・。
今回の28年改正は28年4月1日以後に取得した高額特定資産について適用されます。

高額特定資産は1,000万円(税抜き)以上の資産です。
調整対象固定資産の100万円(税抜き)よりも一桁多いのでお間違いのないようにご注意ください。

文字ばかりで読みにくいですが、一応自分の中で消費税の届出について整理できたように思います。

改正ばかりでより複雑になっている消費税ですが届出ひとつでお客様に巨額の不利益を与えかねないので慎重に行う必要があると改めて認識致しました。

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